2026.7.18
設計士の私がマンションリノベーションという道を選んだ理由
お役立ちコラム
こんにちは!設計士の伊藤と申します。
お客様と打合せをしていると「どうしてマンションリノベーションブランドを立ち上げたのですか?」というご質問をいただくことがあります。
創業から60年以上、木造の注文住宅を中心に家づくりをしてきた仲建設ですが、昨今はリノベーションのご依頼をいただくことも多く、マンションのリノベーションの機会が増えていたこともその理由の一つです。
ただ、それだけが理由ではなく、設計士として住宅業界に携わる中で感じてきたことや、自分自身の家づくりで経験したことが、re:tsumugi(リツムギ)を立ち上げたきっかけとなっています。
そして、その原点となったのは、私が子どもの頃、毎日のように通っていた祖父母の家です。
INDEX
原点となった祖父母の家
両親が共働きだったため、私は平日の多くの時間を祖父母の家で過ごしていました。私にとって祖父母の家は、第二の実家ともいえる大切な場所です。
祖父母は、学校であった出来事や進路の話を聞いてくれたり、私の好物を意識した美味しい夕飯をつくってくれたりと、心落ち着ける存在であり、子どもながらに、「ここに来れば安心できる」と感じていた場所だったように思います。
その家は決して豪華な家ではありませんが、昔ながらの木造住宅で、無垢の木が使われており、地域の棟梁が設計し、建てた家だったと聞いています。
夏になると、床はさらさらとしていてとても気持ち良く、布団も敷かずそのまま床に寝転び、祖父母と一緒にテレビを見て、そのまま眠ってしまうことが何度もありました。
木の香りや足触り、心が落ち着くその風合いや優しい空気は今でも鮮明に覚えています。
大人になって気づいた
家の「愛着」
社会人になってからは、会社の社宅や賃貸マンションなど、さまざまな住まいで暮らしてきました。どの家も便利で、設備も整っていましたが、不思議と愛着を持つことはありませんでした。
「愛着の湧く家と、そうでない家の違いは何だろう」設計士になってから、ずっと考えていました。そして、私なりにたどり着いた答えが「自然素材」と「手仕事」です。
無垢の木や左官仕上げの魅力は、見た目の風合いや質感の良さだけではありません。手触りや足触りの良さ、調湿効果や空気洗浄効果から生まれる澄んだ空気、職人さんの真心を感じる手仕事の温かみ。
それらの魅力は時間とともに味わいが増し、自分たちの暮らしと一緒に育っていきます。
質感を楽しむことのできる素材と、それを丁寧に仕上げてくれる大工さんや職人さんが作った家には、工業製品では生むことのできない風合いが生まれ、それこそが家に対する「愛着」を生んでいるものだと感じています。

設計士になって
感じた違和感
設計士として仕事をするようになり、多くの住宅を見るようになりました。最近の住宅は、短工期で、できるだけコストを抑えて建てる方向へ進んでいます。
利便性が高く、手の届く価格で住宅を提供することは、とても大切なことです。そのような住宅を必要としている方もたくさんいらっしゃいます。もちろん、その価値は十分理解しています。
ただ、その一方で、少し寂しく感じることもあります。日本には、無垢の木や左官仕上げなど、日本の気候風土に合った素晴らしい家づくりがあります。そして、その技術を受け継ぐ腕の良い大工さんや職人さんが、今もたくさんいらっしゃいます。
本来であれば、その素材と技術によって、もっと豊かな住まいをつくることができるはずです。それなのに、家づくりがどんどん均質化され、それが当たり前になっていく。
私は、その流れに少し違和感を感じています。
中古マンションリノベで
自部自身の家づくり
設計士である私自身も、家づくりを考え始めたときは、戸建ての注文住宅を建てるつもりでした。しかし、土地価格は年々高騰し、希望していたエリアでは、とても土地を購入できる状況ではありませんでした。
郊外まで範囲を広げて土地探しもしました。それでも、家族の通勤や通学、生活環境を考えると、慣れ親しんだ地域を離れてまで注文住宅にこだわることが、本当に家族にとって幸せなのだろうか、と悩むようになりました。
そこで、中古マンションという選択肢が現実味を帯びてきました。
しかし、正直に言うと、設計士という仕事をしていながら、私自身も中古住宅に対して不安がありました。
「これから先、何年住めるのだろうか。」
「新築を諦めたことを後悔しないだろうか。」
そんなことを何度も考えました。
分譲マンションや建売住宅も検討し、実際に内覧へ行き、資金計画も立てました。
それでも最後まで心の中から消えなかったのは、
「均質化された住まいではなく、自然素材を使い、職人さんの手仕事を感じられる家で暮らしたい。」という思いでした。
そんな思いを抱えながら、家族の生活環境を変えずに暮らせるエリアで、中古マンション探しを始めました。
さまざまな方々にご協力いただき、多くのマンションを見て回りました。そしてある日、不動産会社の方から、条件に近いマンションが売りに出たと連絡が入りました。
紹介していただいたのは、築27年の中古マンション。立地、広さ、管理状態、そして間取りの可変性。どれをとっても、私たちの条件にピッタリの物件でした。
当時、妻は第二子の出産予定日が間近に迫っていましたが、その日のうちに家族でマンションに向かい、内覧をした際には「ここだ!」という直感がありました。
妻も「ここなら子育てがしやすそうだね」とその部屋を気に入っており、その場で購入を決めました。

大工さんとの試行錯誤
そこからは、自分自身でリノベーションプランを設計しました。
間取り、デザイン、素材、造作家具。
細かな納まりに至るまで、一つひとつ時間をかけて考えました。
厚みと幅の異なるラワン合板をランダムに貼り合わせて羽目板をつくったり、真鍮のフラットバーを床の見切り材として使ったりと、これまであまり採用したことのない納まりや素材にも挑戦しました。
大工さんにとっても初めて経験する施工方法で、通常よりも手間がかかる工事だったと思います。それでも、大工さんは嫌な顔を一つせず、
「どうしたらもっときれいに納まるだろう」と、一緒になって考えてくださいました。
より良いものにするために、現場で知恵を出し合い、試行錯誤を重ねながら一緒に住まいをつくっていく。その時間は、私にとってかけがえのない経験でした。
技術だけでなく、人柄も素晴らしい大工さんや職人さんと一緒につくる家だから、自信を持ってお勧めすることができます。

完成した住まいで感じたこと
すべての工事が終わり、養生を外し、クリーニングが終わったあと。完成した住まいに一人で入ったときのことを、今でも覚えています。
自然素材ならではの澄んだ空気。木の香り。思い描いていた通りに完成した空間。そして、その一つ一つを形にしてくださった大工さんや職人さんの仕事。
そのすべてを目の前にしたとき、「マンションリノベという選択をして、本当によかった」と思うことが出来ました。
現在、その家で暮らしている子どもたちは、私が祖父母の家でそうしていたように、桧の無垢床の上で寝転び、そのまま眠ってしまうこともあります。
その姿を見ると、祖父母の家で感じていた心地よさを、今度は自分の子どもたちが感じてくれているのかなと思い、この家をつくって良かったと感じます。
お客様にもそんな暮らしを届けたいと思っております。
re:tsumugi を立ち上げた理由
東京では、中古マンションを購入し、リノベーションをするという住まいづくりが、若い世代にとって特別なものではなくなっています。
名古屋でも、その選択をされる方は少しずつ増えてきました。それでも、まだまだそんな方法があることを知らない方が多いと感じています。
本当は自然素材の家に住みたい、自分たちらしい住まいをつくりたい。でも、土地価格や建築費の高騰によって、その夢を諦め、建売住宅や分譲マンションを選ばざるを得ない。そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自然素材の心地よさや職人さんの手仕事で、家族が何十年も愛着を持って暮らせる住まい。そうした価値を、もっと多くの方に知っていただきたい。
そして、注文住宅を諦めた方にも、「愛着の湧く、質の高い住まいを手の届く価格で実現できる」ことを知ってもらい、家づくりのお手伝いをしたい。
そんな思いから、マンションリノベーションブランド「re:tsumugi(リツムギ)」を立ち上げました。
これからも、一組でも多くのご家族に、愛着が湧き、「帰りたい」と思える住まいを届けていきたいと思っています。